NUSでイノベーションチャレンジを開催した(1)

気がついたら前の記事から3ヶ月以上経っていました。この間に学校でイノベーションチャレンジ(アイデアソン)を開催しました。落ち着いてきたので、イベントを開催するまでの経緯を振り返りたいと思います。

 

Entrepreneurship Clubに立候補する

私はMBAではアントレプレナーシップの勉強をしたいと思っていた(今も思っている)のですが、入学後、シラバスを見ると、Semester1, 2に思いのほかアントレプレナーシップの授業やイベントがなかったのです。ないなら作るかーということで、ひとまず公約を作り、Student Councilの選挙に出てみました。Student Councilという仕組みにあまりなじみがありませんが、学生クラブのリーダーが集まった組織です。このStudent Councilの中に、10個ほどのクラブがあります。

日本の大学の場合は、クラブがあり、クラブ内でリーダーを選出するという流れですが、NUSの場合は、まずクラブのリーダー(PresidentとVP)を選出し、リーダーがクラブ活動の内容を決める、という流れです。

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MBAのクラブは就職を有利にするための情報交換が目的のため、業界別になっており、Healthcare, Energy, Consultingなどがあります。Entrepreneurship Clubもその中のひとつです。私はここで2つの公約を打ち出しました。ひとつは、NASAハッカソンを開催する。もうひとつは、Japan Tripを実施する。NASAインパクトが強かったのか何が効いたのかはわかりませんが、無事にVPのポジションを手に入れました。

 

NASAとのハッカソンを断念する

もともとはNASAハッカソンをやりたかったのですが、NASAは1都市1ロケーションという制約があり、シンガポールにはすでに別の主催者がいたため、NUSでは開催できませんでした。何度か主催者にメールしたものの、3週間前に落選通知が1通来たのみ。

 そして、同級生は、はあ?ハッカソン?あのエンジニアが行くやつでしょ?という感じ。アイデアソンも全くなじみない感じ。要するに同級生はほとんどアントレプレナーシップに興味がない人ばかりだったということです(これは授業がすすんでいくうちに変わっていくのですが)。この逆風の中で、ハッカソンは無理にしても、なんとかアイデアソンができる方法はないのかを考えました。

 

なぜアイデアソンなのか

それでもなぜアイデアソンがやりたいと思ったのか、理由は2つあります。

まずひとつは、アイデアソンのスピード感が、普遍的に仕事に役立つと考えるから。それまで自分が会社で経験してきた仕事とは違うスピード感で、アイデアやプロトタイプができていくという経験に驚き、またとてもわくわくしました。MBA後に仕事をするとき、アイデアをまとめて仕事をしなければならないとき、その経験は役に立つと思いましたし、これからビジネスリーダーとなる人が知っておくべきスピード感だと思いました。

もうひとつは、先が見えない状況をマネージする力が養えると思うから。シンガポールの標準的なアイデアソンでは、チームもアイデアも事前に作る方式が一般的ですが、あえて当日アイデアもチームも決めるという方法をとりました。あまり知らない人とすぐに話せてチームワークができる力は、特にプロジェクト形式の仕事をする人にとっては重要な力だと考えます。

この2つだけではなく、新規事業に関わるたくさんのことを私はアイデアソンから学んだので、その経験を共有したいと思いました。

 

イデアソンをスポンサーしてもらう

転機になったのは、10月からイノベーションコンサルティング会社のICMGでインターンを始めたことでした。はじめは言われた仕事をやっていたんですが、何かやりたいことない?と聞かれ、ハッカソンとかアイデアソンとかやりたいんですよね、といったところ、OKが出、スポンサーも探していただけることになり、企画を始めることになります。

ICMGは日系企業向けに東南アジア地域での新規事業創出を支援している会社で、東南アジア地域の企業、アクセラレータ、VC、大学等に広くコネクションを持っています。ICMGがハッカソン企画の経験があり、当日のインプットなどができるリソースやコネクションを持っていた点も、企画を進める上では強い追い風でした。

また、ICMGのようなエコシステムビルダーと組むことで、NUS単独で企画をするよりも、将来的に他のプレイヤーと協業しやすくなる効果もあると考えました。一緒にやりましょうと言っていただいたことに大変感謝しています。

 

参加者を増やす

最初の、そして最大のハードルは、MBAの学生の、ハッカソンは自分たちには関係ない、アイデアソンもなんだかよくわからない、という無関心の壁を突破すること。これは名前が全てなので、シンガポール中のイベントをググり、それっぽい名前を探し、最終的にイノベーションチャレンジという名前に行き着きました。これはいけてるっぽい雰囲気を醸しておりとてもいい判断だった(我ながら)。

イノベーションチャレンジとはなんなのか、というキャッチーな説明も、相当パターンを作りました。ビジネスコンペ(MBA生にはおなじみ、1ヶ月くらいかけて提案書を作るイベント)のスーパーショートバージョンだとか、1日でビジネスアイデアを作るイベントだとか、スーパーインテンシブな課題解決イベントだとかいろいろ言いました。最終的にどの説明が一番すっと落ちたのかはよくわかりません(全部いろいろなところで書いたから)。

 

そして募集開始したのですが、あまりに申し込みが来ず、文字通り胃が痛い日が続きました。Whatsappのグループに募集ページのリンクを送ったり、Whatsappに募集ページのサマリーをjpgにして流したり(サムネイルが出るのでわかりやすい)、別のFacebookグループにリンクを流したり、募集ページが文字ばかりでわかりづらいと言われて全面的にjpg画像にしたり、個別にメッセージしたり、友達に頼んだり、最終的には教授に授業終了時に時間をもらい、さあ、今あなたがするべきことは、この募集ページのQRコードの写真をとって、今すぐサインアップ!みたいなテレビ通販のようなプレゼンをしたり、とさまざまなことをしているうちに、じわじわと参加が伸びていきました。あのときリンク送りまくってごめんなさい。f:id:n3ni:20190413210219p:plain

あと、参加が伸び始めたきっかけになったのは、テーマより賞金を全面に打ち出し始めたときだったような気がします。 入口にはわかりやすいインセンティブが大事です。

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そんなことをしていたら、気づいたら参加申し込みは24名に。NUSのフルタイムの学生は100名なので、おおよそ1/4の関心を集めたことになります。なんだかよくわからない自信でその人数は集められると最初は考えていたのですが、落ち着いて考えると、日曜日丸一日をつぶすイベントに、それだけの母集団から呼べたのはわりとすごいことのような気がします。Semester 2でVCなどの授業を受け、授業開始時よりは起業やスタートアップ、イノベーションへの興味が高まってきたタイミングだったことも、結果的にはよかったと思います。本当に申し込んでくれた同級生には感謝しかありません。

このあたりから、当日来てくれた人が絶対に何かを持ち帰ることができるイベントにしよう!と、当日に向けて気持ちを切り替え始めました。

 

(2)につづく予定。